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2008年5月 9日 (金)

「YUKINO」-1

 神はこの世に人間を送り出す時、自分の姿に似せて男と女のふたつの性を創ったという。

 しかし神ほどに完璧には創らず、自分の姿に似せてはいるものの微妙に不完全なものにした。

 神は男と女の形を全体の構造としてはほぼ同じように創ったが、男は少し直線的に創り、女は少し曲線的に創った。

 そして男の身体はゴツゴツと硬くし、女の身体は丸みを帯びさせて柔らかく創った。

 それと同時に神は男には柔らかいものを求める心を与え、女には硬いものを求める心を与えた。

 神はまた女を男と比べて少しサイズを小さくし、力も男と比較して少し弱くした。

 そのために男は女を見て自然に可愛いいと思わせるようにし、どうしても保護してやりたいと思えるように創った。

 その上で神は、女にだけ子供を生む能力と育てる能力(乳房)を与え、男にはそれを与えなかった。

 男にはどちらかと言えば攻撃型で新しいものを欲しがる開拓心を与え、女にはどちらかと言うと守備型で手に入れたものを守る心を与えた。

 そのせいで男と女の間には何時も諍いが耐えないようになった。

 神によってそのように創られた男と女はまたそれらの構造上、どちらをとってもいわば片手落ちのようなものなので、男は女なしでは生きていけないし、女も男なしでは生きていけないようになってしまった。

 勿論いくつかの例外はある。

 女のような男もいれば、反対に男のような女もいる。女なしでも生きていける男もいれば、男なしでも生きていける女もいる。

 しかし一般的にはほとんどの男と女はこのパターンに当てはまると考えてもいいのではないだろうか。

 斎木には男と女の関係を考える時、いつも不思議に思う事がひとつあった。

 それは、神は何故人間にふたつの性を与えたのかと言うことだ。何故だろう、何故人間はひとつの性であってはいけなかったのだろう?

 性をひとつにして、例えば男がわざわざ女を求めたりなどと言う面倒な事をしなくても、自分は自分だけで充分充足できるという風に、神は何故創らなかったのだろう?

 あるいはまたふたつだけではなく五つも六つも性を創って、いろんな組み合わせが出来るようにするという手もあったはずなのに、神は何故そうはせず、たったふたつだけに集約してしまったのだろう。

 斎木にはそういういわばどうでもいいような当たり前の事が、何故か不思議に思えるときが時々あった。

 街を歩いていると、何十人、何百人の人間と出会うというのに、その中には結局男と女の二種類しかいないという事が、当たり前のことであるにもかかわらず、斎木には何故か不思議な感じに思えてくる時がこれまでにしばしばあった。

 女は決まったように胸が膨らみ、胴がくびれ、腰とお尻が出っ張っている。

 ただ女だからと言う理由だけで、多少の大きさや形の違いこそあれ、大人の女はみんな同じ形をしている。

 それは男の場合も勿論同じでみんな大体ずん胴型に出来ている。普通に考えればそれは別に不思議な事でもなんでもないはずなのだが、そんな当たり前の事が斎木には何故か不思議に思える時がある。

 神はまた何故この世に美しい女と醜い女を創ったのだろう。

 何故頭のいい男と頭の悪い男を創ったのだろう。何故健康な人と病弱な人を創ったのだろう。

 何故働かなくても悠々と生きていける裕福な人と、どんなに努力をしても飢餓で苦しんで死んでいく人を創ったのだろう。

 何故みんな同じようには創らなかったのだろう。

 それは神もまた人間と同じようにエコ贔屓をする存在だからなのだろうか。

 神は完璧だと言うが果たして本当にそうなのだろうか。完璧なら何故こんなにもたくさんの不公平をつくったり、不完全な者をこの世にずっと送り続けているのだろう。

 何故に。何のために。斎木にはどうしてもそれが理解できなかった。

 この世界には六十億人もの人間がいるというのに、一人として神のように完璧な者はいないではないか。

 それは人間を創った神自身がもしかしたら人間と同じように完璧ではないからではないだろうか。

 でなければ、これは神の単なる悪戯としか考えられない、と斎木は人間の深い業に触れるたびに、また自分の中にある、ある種の克服しがたいような悪魔の存在を感じるたびにそう思うのだった。(つづく)

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