「イミテーション・ラブ」-37
2 オーの計算
アリサがモーターサイで怪我をしたと言うのは嘘ではなかった。
今日は日曜日だったので、朝の遅い時間に起きたオーは、テレビゲームに興じているアリサに朝食を近くの屋台まで買いに行ってくれるように頼んだ。
アリサは素直に母親の依頼にこたえてアパートを出て行った。
ところがなかなかアリサが帰ってこないので心配していたら、約三十分後に病院から電話があり、オーは驚いてその病院まで駆けつけたと言うわけだ。
幸い怪我はたいした事はなかったが、いろいろ検査をするので時間を取られてしまった。
その混乱の中でオーはすっかり哲也との約束を忘れてしまっていた。
気がついた時には約束の時間を十五分くらい過ぎていたと言うわけだ。
アリサの検査を待っている間にオーはいろんなことを考えた。
元夫のジェーンはあの日家を出て行ったきり帰ってこない。どこで何をしているのか知らないが、今度こそはもう家には入れないつもりだ。
アリサは寂しがってはいるがもうこれ以上は許せない。アリサにもそれは説得するつもりだ。
オーはテツヤのことも考えた。
テツヤもあと一ヵ月すれば日本に帰ってしまうだろう。そうすれば私はどうすればいいのだろう。
テツヤの援助がなくなれば経済的にはかなり苦しくなってしまう。
前はアリサが田舎にいたので何とかやってこられたが、今は事情が違う。とても店の収入だけではやっていけないのは明らかだ。
それでも月に何人かの男に体を売れば何とかなるだろうがそれだけは何とか避けたい。
せめてテツヤのように決まった男をみつけて援助してもらえるならまだましだが。
オーには前から声を掛けてくれる男が一人いるにはいた。その男はバンコクにもう二年近く住んでいる。
三年バンコク勤務と言っていたから後一年位はいるらしい。
テツヤより五、六歳年上だが優しそうな人だ。あまり好みのタイプではないがそんな贅沢なことも言っていられない。
あの人はバンコクの北のパトゥンタニーという所に住んでいる人で、月に二回くらいのペースで週末に店にやってくる。
今度やってきた時には何気なくそんな話をして気持ちを探ってみようとオーは思った。
恐らくあの人なら私の要求を断りはしないだろう。
これまで援助してくれたテツヤには悪いがこれも生活のためだ。ただし本格的に付き合うのは勿論テツヤが日本に帰ってからだが。
オーがそんなことを考えているうちにアリサの検査も終わり、怪我をした脚の治療も終わったので二人でアパートに帰った。(つづく)


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