「YUKINO」-3
Ⅲ
「こんな言い方をすると、もしかしたら失礼かもしれないから、もし嫌だったら答えてくれなくてもいいけど、私には君はこういう所で働く娘にはとても見えないんだ。何か事情があってこんな仕事をしているの。よかったら教えてくれないか?」
部屋に入り二人とも服を脱いだ後、シャワーをしながら斎木は思わずそんな無粋なことを聞かずにはいられなかった。
それはあまりにもYUKINOの表情がこんな場所にはふさわしくないと思えたからだ。
YUKINOは裸で立っている斎木の身体を、一旦自分の手にボディーシャンプーをつけてのばして丁寧に洗いながら、一昨年の冬の震災のことをぽつりぽつりと話し始めた。
それはこんな場所と状況で聞くにはあまりにもそぐわないような悲しい話だった。
一瞬にして家を失った事、そして同時に仲のよかった二歳年上の兄を火事で失ったこと。
幸いにして自分と両親は何とか生き残ったが、両親は二人とも未だにそのショックから立ち直る事が出来ず、なにもできない状態で、毎日をただ呆然と過ごしているだけだという話を、YUKINOは斎木の身体を丁寧に洗いながら淡々と口にした。
「だから私がこうやって生活費を稼ぐしかないんです」
YUKINOはそう言って、それでもなんとか笑顔を保っていた。
「そうだったの。それは大変な事だったんだね。そんな事とも知らないで余計な事を聞いてしまって申し訳ない」
斎木はまず素直に無粋な事を聞いてしまったことをYUKINOに謝った。
そしてこんな場でそんな話を聞いてしまったことをひどく後悔もした。
ちょっと考えてみればここは神戸なのだ。だからそんな事があったとしても少しも不思議な事ではなかったのだ。だが斎木はその事をうっかり忘れていた。
あれから二年以上の時間の経過の中で神戸は驚くほどの復興を遂げた。
あれほどすさまじく破壊されつくした街が、今では殆んどその面影が無いほどに表向きは綺麗な街に生まれ変わっている。
この街のことを何も知らない人が見たら、たった二年前にあんなにひどい惨事があったなどとはとても思えないほどの復興振りだ。
だが街の形は綺麗になっても、そこに住んでいた人々の心の傷は決してまだ癒えてはいなかったのだということを、斎木はYUKINOの言葉によって否が応でも知らされることになった。
「いいえ、私こそつまらない事を言ってしまってごめんなさい。そんな事は気にしないで今日はゆっくり楽しんで行ってくださいね」
YUKINOは笑顔でそう言って、左手にボディーシャンプーを塗りつけて斎木のペニスを親指と人差し指で丹念に洗い始めた。
YUKINOの白くて華奢な指が斎木のペニスの敏感な部分をさすり始めると、さっき聞いた悲惨な話で萎えかけていたペニスが、斎木の意思とはまるで別の生き物のようにまた硬く勃起し始めた。
斎木は自分の欲望の強さがちょっと恥ずかしく、また情けなく思ったがこれだけはどうする事も出来なかった。
しかし硬くなった斎木のペニスを見ても、YUKINOはもうこんな事にはすっかり馴れてしまっているのか、表情ひとつ変えず真剣な眼差しで自分の仕事に集中していた。(つづく)


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