フォト

「YUKINO」

2008年5月14日 (水)

「YUKINO」-6(最終回)

 受付ルームに戻ると、篠田は既に部屋から戻ってソワーに座り、煙草を吸いながら斎木を待っていた。

 二人は料金を支払った後その店を出た。そしてその店のすぐ近くにある喫茶店に入った。

「どうだった?」

 椅子に腰を落ち着けたところで篠田がさっきの店の感想を聞いてきた。

「いい店だったよ。それに女の子もいい娘だった。しかし彼女は去年の震災の被害者だったようで、その話を聞かされた時は、ちょっとチンチンが萎えそうになったけどな」

 斎木はその時のことをそんな風に説明した。

「ああそう。俺が前に行った店の娘も同じようなことを言ってたよ。やっぱりそう言う可哀相な娘が多いんだな、この街には」

「うん、そうかもしれない。しかしああいう娘って、ホントにけなげだよな。今時の日本にあんなけなげな娘がまだいたのかと思うと、正直言ってちょっと驚きだったよ。

 ほんとにこんないい娘にフェラチオなんかさせていいのだろうかとマジで思ったくらいだよ。何か自分が悪魔のように思えてきたな」

 斎木はその時感じた事をそんな風に素直に篠田に向かって表現した。

「ははは、それはしょうがないよ。だってこういう俺達みたいな馬鹿な奴もいなかったら彼女たち飯が食えなくなるんだからさ。

そう思って自分を慰めるしかないよ。まあこういうことはあんまり真剣に考えないほうがいいんじゃないの。考えたって自分の助べえが治るわけじゃないんだからさ」

 篠田は割り切ったようにそう言った。

「まあそうなんだけどさあ・・・。それにしても何か複雑な気持ちだったな・・・」

 それから暫く雑談をした後斎木は篠田と別れた。

 斎木の頭の中にはその後もずっとYUKINOの事が消えずに残った。

 斎木はYUKINOのあの透き通るような白い体と、あの涼しげな笑顔がどうしても忘れられなかった。

 それが毎日少しずつ心の中に蓄積されてゆき、どうしてももう一度逢いたいという気持ちが募ってきた。しかし仕事の忙しさの中で何とかその気持ちを抑えていた。

 それから約一ヵ月後、ちょうど神戸に行く仕事があったので、その仕事を済ませた帰りの夕方、斎木は一人でその店を訪れた。

 しかし受付で女の写真を見てもYUKINOの写真は何処にも無かった。

 斎木は受付の若い男にYUKINOという娘はもういないのかと尋ねた。

「ああYUKINOちゃんですか?そうですね、彼女は一週間程前にこの店を辞めました。すみません。でもまた新しい可愛い娘も入ってますからどうですか?」

 男はそう言って申し訳なさそうに謝った後、新しいアルバムを斎木に見せようとした。

「だったらもういい」 といって斎木はそのままその店を後にした。

 YUKINOは一体どうしたのだろう・・・。

 また別の店に変わったのか、それとも誰かいい男でも見つけてこの商売から足を洗ったのか、もしそうだったらその方がいいのだが、と斎木はその時YUKINOの為にそう思った。

 しかしもう今となってはそれを探る術もない。余程の事でもない限り、この広い神戸の街でもう二度と彼女に逢えるようなことはないだろうから。

 斎木はその日店を出てから、夕暮れの街をとぼとぼと歩いて阪急三宮駅の方に向かった。

〈YUKINO、君は廃墟の中に舞い降りた天使のようだった〉

 斎木は心の中で何度もそう呟いていた。その時の斎木の目には行きかう人々の姿は全く入ってこなかった。

 斎木は大阪に向かう電車の中でまた奇妙な思いにとらわれた。

 それは、神は何故人間に精神と肉体を与えたのだろうか、と言うことだ。

 精神だけだったら駄目だったのだろうか?。精神だけだったら一日に三度の食事も摂らなくてもいいし、トイレにも行かなくてもいい。

 服なんか買わなくてもいいし、住む所も必要ない。

 それになによりも男が女を欲しがる必要もない。こんな欲望に悩まされなくてもすむ。

 もし人間が精神だけで存在していられたら、どれほどこの心は軽やかか計り知れないものがある。こんな肉体があるために、つまらない煩悩に苦しめられてしまうのだ。

〈ああ肉体など無くなって精神だけになり、この空間の中を何時もふわりふわりと浮いていられたらどんなに楽だろう〉

 斎木は通り過ぎる街の夜景を窓ガラス越しにぼんやりと眺めながら、そんなことを考えていた。(完)

ブログランキング 純文学小説
                                                 

2008年5月13日 (火)

「YUKINO」-5

 斎木は今日、加古川に住んでいる大学時代の旧友と久し振りに神戸で会う約束をした。

 旧友の名は篠田という。今日篠田はたまたま神戸に仕事で出てきていたのだ。

 夕方その篠田から電話が入り、久し振りに飲まないかと誘われたので、斎木は神戸まで出向いて行くことにした。

 たまたま仕事が暇な時だったので、斎木はその誘いに乗り六時過ぎに仕事を終え、梅田に行き阪急電車に乗った。

 あの時とは違い大阪から神戸までは特急列車で三十分もかからなかった。

 七時に三宮で待ち合わせ、駅の近くの居酒屋でビールと焼酎を飲んですっかりいい気分になったところで、ファッションヘルス好きの篠田の提案でこの店にやってきたというわけだ。

 篠田は加古川で小さなバイク・ショップを経営していて、加古川と神戸は比較的近い事もあって神戸のあちこちのヘルスを昔からよく知っていた。

 その話を斎木は本人からもよく聞いていた。中でもこの店が彼の一番のお勧めだった。

 斎木も何回かこの種の店には行った事があるが、それでも一年に一回も行く事は無かったが、ヘルスに行くのは決して嫌いなほうではないので、酒の酔いも手伝って斎木は篠田の提案を素直に受け入れた。

 篠田と一緒にヘルスに行くのは今日が初めてだった。

 店に入って斎木と篠田は店員から渡された写真アルバムで女を選んだ。

 何人かの女の写真の中で斎木はYUKINOを選んだ。

 実際のYUKINOは写真から想像していたよりもかなり華奢だったが、写真以上に魅力的な娘だった。

 YUKINOはシャワーが終わると、バスタオルで丁寧に斎木の体を拭いた後、別のバスタオルで斎木の腰を巻いた。

 それから斎木の身体を拭いたバスタオルで自分の身体も拭いて、そのバスタオルをそのまま自分の身体にまきつけてから斎木をベッドの方に導いた。

 そして斎木をベッドのうえに仰向けに寝かせてから愛撫を始めようとした。

 しかし斎木はそれを拒否し、逆にYUKINOを寝かせ斎木の方が君を愛撫したいがいいかと聞いた。

 YUKINOは静かに笑って素直にそれを受け入れた。その方面ではそれ程マメでもない斎木が、自分から攻めてみたくなるほどYUKINOの身体は魅力的だったのだ。

 YUKINOの身体は斎木がいままで接した女の中で一番色が白かったといえるだろう。それこそ透き通るという表現がぴったり来るほど白かった。

 こんなに色の白い女の肌を斎木は今まで見た事も無かった。

 YUKINOの身体は手も脚も全てが今にも壊れそうなほど華奢だった。それでも胸とお尻だけはちょうどいいくらいの肉付きをしていた。

 斎木は大事なものでも扱うように、優しく丁寧に時間をかけてYUKINOの身体を隅から隅まで愛撫した。

 斎木の頭の片隅にはさっきYUKINOから聞いた悲惨な話が少し残っていて、こんな可哀相な娘にこんな事をしてもいいのだろうかと言う思いが微かにではあるがあった。

 しかしそんな思いもどこかに吹き飛んで行ってしまうくらいの魅力がYUKINOの身体にはあった。

 斎木はYUKINOの身体を愛撫しながら、何度も何度も「綺麗だ」と言う言葉を連発した。

 YUKINOは微かに笑みを浮かべて、そんな斎木を赤ん坊にお乳を飲ませている母親のような優しい眼差しで見つめていた。

 その眼差しを受けて、斎木は自分の娘のような歳の女にある種の母性を感じた。

 斎木のYUKINOへのひと通りの愛撫が終わると、今度はYUKINOの方が上になって斎木を愛撫し始めた。

 斎木は大人しくそれに身を任せるようにベッドの上に仰向けで寝た。

 YUKINOもまた手と舌をつかって斎木の全身をくまなく愛撫してくれた。

 チロチロとYUKINOの柔らかくて生暖かい舌の感触を全身に感じながら、斎木は目をつむったままYUKINOの小さな肩や背中を優しく撫ぜていた。

 そして最後に斎木が何も言わないのに、YUKINOは自分から斎木の顔の上に自分の下半身をまたがらせて、いわゆるシックスティ・ナインの態勢になった。

 斎木はその時男と女が一緒にいると、何故こんなにもいやらしい事をしてしまうのかとちょっと不思議な感覚に陥った。

 人間と言うのは何処まで快楽を追求したら気が済む存在なのだろうという思いが、いやらしい行為をしている最中にちょっと頭の片隅をよぎった。

 また一方では、自分の中にある、自分の力ではどうする事も出来ない悪魔の存在を感じていた。

 斎木は色が白いため色素の沈着していないピンク色のYUKINOの中心部を眺めながら、女の身体と言うものに抗いがたい強い力で惹かれていく自分自身を、また不思議なことのように思いながらフィニッシュを迎えた。

 制限時間の一時間半が近づいても、YUKINOは斎木の腕の中で微かな寝息を立てたままぐっすりと眠っていて、一向に起きる気配が無い。

 余程疲れがたまっているのだろうか。

 一時の興奮が収まると斎木の心からも悪魔が去り、YUKINOへの優しい思いやりの気持ちが戻ってきたようだ。

 斎木は一層の事追加料金を払ってでもこのままずっとYUKINOを寝かせてあげようかとも思ったが、篠田が待っているので仕方なくYUKINOの肩をゆすって起こした。

「あらごめんなさい。私すっかり寝てしまっていました」

 YUKINOは眼を覚ますとすぐそう言って斎木に謝った。

「全然問題ないよ」

 斎木はそう言ってYUKINOを慰めた。

 YUKINOはもう一度シャワーの所に斎木を連れて行き、今度は簡単に斎木の身体を洗った。

 それからついでのように急いで自分の身体も洗い、その後バスタオルで丁寧に斎木の身体を拭いた。

 斎木はその間ずっとYUKINOの表情を愛しい思いで見つめ続けていた。(つづく)

ブログランキング 純文学小説                

2008年5月12日 (月)

「YUKINO」-4

 斎木は大阪にある、とある設計会社の社員だった。今年で四十六歳になる。

 ちょうどその頃斎木は神戸に造られる、新しいホテルの内装設計の打ち合わせのために何度も神戸を訪れていた。その最中にあの大惨事が起きたのだ。

 それにより工事の話は一時中断した。しかし施主の強い意向により工事は続行される事になった。

 幸い新しい建築物は構造的には何も問題ないと診断されたからだ。

 斎木はあの大惨事から約十日後に大阪からまた神戸を訪れた。交通機関が遮断されていたので車で行くしかすべが無かった。

 斎木は部下の田村という若い社員が運転する車に、とりあえず水のタンクを二個積み込んで朝の十時に大阪を出発した。

 しかし神戸に続く幹線道路は物凄い渋滞でなかなか進む事が出来ず、神戸の中心になんとか着いたのは夕方の五時頃だった。

 車の窓から眺める神戸の街は、神戸の中心に近づくにつれて悲惨な状況を見せていた。

 それらはもう廃墟としか言えないような状況だった。住宅は崩壊し、ビルは大きく傾き、道はいたる所で寸断されていた。

 その日はそのプロジェクトのために会社が用意していた宿舎に二人は泊まった。

 宿舎はその当時被害が最もひどいと言われた長田区の山の手にあった。

 山の手の方は岩盤が比較的硬かったためか、同じ長田区でも想像していたほどの被害は受けていなかった。

 この宿舎には普段は、そのプロジェクトのために東京から来ていた斎木より若い設計者の浅井が一人泊まっていた。

 あの日の朝の地震にあい、幸い何も怪我は無かったので歩いて神戸を脱出して、尼崎まで行ってから、なんとかタクシーを拾って大阪まで行き、その後東京に帰ってしまったので、その時は空の状態だった。

「ドンと下から突き上げられるような感じでした。私の身体は多分十センチ位は宙に浮いたと思いますよ」

 東京に帰った浅井はその宿舎で地震にあったときの状況を、斎木との電話の中でそう話した。

 宿舎になっている小さな一軒屋は屋根の瓦が少し落ちたのと、壁の一部に軽くひびが入った程度で、それ程の被害はなかった。

 水道とガスはまだ復旧していなかったものの、電気だけはついていたのでそれだけでもかなり助かった。

 夜になって空腹を覚えた二人は、何処かで食事でも出来ないだろうかと外に出てみたら、幸いにも歩いてすぐのところに食堂があり営業をしていた。

 店の前に大きな鍋を設置して、その店の主婦らしき中年の婦人が、近所の主婦らしき人と話しながら何か焚き物をしていた。

 店は外から見ても明らかに傾いていたが、なんとか崩れずに持っている感じだった。

「なにか食い物はありますか?」

 斎木がそう尋ねると

「何んにも出来ひんけどカレーでよかったらありますよ」

 その婦人がそう言ったので二人はとりあえず中に入った。

 ドアは枠が傾いているためもう閉める事が出来ないためか、開けたままになっていて、中には四、五人の客が地震についての話をしながら食事をしていた。

 斎木たちは食事をしながらも店が今にも崩れて来はしないかと常に不安だった。

 食事が終わってまた宿舎に戻った二人は他に何もする事が無いので、持ってきたウイスキーをちびりちびりと飲みながら夜を過ごした。

 そして次の日、朝から車で元町の海側にある現場の近くまで行き、適当な所に車を止めてそこからは歩いて現場に向かった。

 街を歩いていると水平、垂直感覚がおかしくなるほど真っ直ぐ垂直に立っている建物が少なかった。

 完全に潰れてしまったビル、潰れてこそいないが傾いて今にも潰れそうなビルがいたるところにあった。

 歩道のアスファルトはいたる所に亀裂が入り一部は盛り上がり、真っ直ぐ歩けない道がそこら中にあった。

 斎木たちは午前中にオーナー側と打ち合わせを済ませ、午後になってまた車で大阪に戻った。

 打ち合わせをしている間にも震度三か四程度の余震が一度来てビルがグラグラと揺れた。

 その後も斎木は何回かそのプロジェクトの打ち合わせのために神戸を訪れた。

 南港から船でハーバーランドまで行ったり、電車とバスを乗り継いで行ったりした。

 時間の経過とともに次第に交通機関も復旧していったが、どんな交通手段を使ってもその頃の二、三ヶ月は大阪と神戸の往復だけでほぼ一日を費やすような状況だった。(つづく)

純文学小説 - 小説ブログ村

2008年5月11日 (日)

「YUKINO」-3

「こんな言い方をすると、もしかしたら失礼かもしれないから、もし嫌だったら答えてくれなくてもいいけど、私には君はこういう所で働く娘にはとても見えないんだ。何か事情があってこんな仕事をしているの。よかったら教えてくれないか?」

 部屋に入り二人とも服を脱いだ後、シャワーをしながら斎木は思わずそんな無粋なことを聞かずにはいられなかった。

 それはあまりにもYUKINOの表情がこんな場所にはふさわしくないと思えたからだ。

 YUKINOは裸で立っている斎木の身体を、一旦自分の手にボディーシャンプーをつけてのばして丁寧に洗いながら、一昨年の冬の震災のことをぽつりぽつりと話し始めた。

 それはこんな場所と状況で聞くにはあまりにもそぐわないような悲しい話だった。

 一瞬にして家を失った事、そして同時に仲のよかった二歳年上の兄を火事で失ったこと。

 幸いにして自分と両親は何とか生き残ったが、両親は二人とも未だにそのショックから立ち直る事が出来ず、なにもできない状態で、毎日をただ呆然と過ごしているだけだという話を、YUKINOは斎木の身体を丁寧に洗いながら淡々と口にした。

「だから私がこうやって生活費を稼ぐしかないんです」

 YUKINOはそう言って、それでもなんとか笑顔を保っていた。

「そうだったの。それは大変な事だったんだね。そんな事とも知らないで余計な事を聞いてしまって申し訳ない」

 斎木はまず素直に無粋な事を聞いてしまったことをYUKINOに謝った。

 そしてこんな場でそんな話を聞いてしまったことをひどく後悔もした。

 ちょっと考えてみればここは神戸なのだ。だからそんな事があったとしても少しも不思議な事ではなかったのだ。だが斎木はその事をうっかり忘れていた。

 あれから二年以上の時間の経過の中で神戸は驚くほどの復興を遂げた。

 あれほどすさまじく破壊されつくした街が、今では殆んどその面影が無いほどに表向きは綺麗な街に生まれ変わっている。

 この街のことを何も知らない人が見たら、たった二年前にあんなにひどい惨事があったなどとはとても思えないほどの復興振りだ。

 だが街の形は綺麗になっても、そこに住んでいた人々の心の傷は決してまだ癒えてはいなかったのだということを、斎木はYUKINOの言葉によって否が応でも知らされることになった。

「いいえ、私こそつまらない事を言ってしまってごめんなさい。そんな事は気にしないで今日はゆっくり楽しんで行ってくださいね」

 YUKINOは笑顔でそう言って、左手にボディーシャンプーを塗りつけて斎木のペニスを親指と人差し指で丹念に洗い始めた。

 YUKINOの白くて華奢な指が斎木のペニスの敏感な部分をさすり始めると、さっき聞いた悲惨な話で萎えかけていたペニスが、斎木の意思とはまるで別の生き物のようにまた硬く勃起し始めた。

 斎木は自分の欲望の強さがちょっと恥ずかしく、また情けなく思ったがこれだけはどうする事も出来なかった。

 しかし硬くなった斎木のペニスを見ても、YUKINOはもうこんな事にはすっかり馴れてしまっているのか、表情ひとつ変えず真剣な眼差しで自分の仕事に集中していた。(つづく)

純文学小説 - 小説ブログ村

2008年5月10日 (土)

「YUKINO」-2

 斎木は今ベッドの中で女を抱いて寝ている。

 女は勿論今から二十年前にみんなから祝福されて結婚した斎木の妻ではない。

 斎木よりも二十歳以上も歳の離れた若い女だ。娘と言っても殆んど不思議ではないような若い女だ。

 ここは神戸の三宮にあるファッションヘルスの一室だ。

 女は肌の色が透き通るように白くて、華奢でそのくせ胸だけははお椀を伏せたくらいのちょうどいい大きさだった。

 女はその上に清く澄んだ綺麗な目と涼やかな笑顔を持っていた。

 女は小柄なので斎木の身体の中にすっぽりと納まって、全く安心しきったように今眠っている。

 斎木の両手に触れている女の二の腕は赤ん坊の肌のように柔らかくてすべすべしている。

 女はついさっきまでシックスティ・ナインの態勢で斎木のペニスをしゃぶっていた。

 そして斎木が精液を女の口の中に放出すると、ベッドの傍にあるティッシュペーパーで斎木のペニスと自分の口をぬぐった。

 その後すぐに立ち上がり、シャワーの所に行き口をうがいした後、消毒液できれいに消毒した。

 それからまたベッドに戻ってきて、余った時間で斎木の身体をマッサージしようとしたが、そんなことはもうしなくていい、と言う斎木の言葉に甘えてこうやって眠っているのだ。

 かなり疲れがたまっているのだろう。

 女は斎木の腕の中ですぐに眠りに堕ちたようだ。女の名前はYUKINOと言った。(つづく)

純文学小説 - 小説ブログ村

2008年5月 9日 (金)

「YUKINO」-1

 神はこの世に人間を送り出す時、自分の姿に似せて男と女のふたつの性を創ったという。

 しかし神ほどに完璧には創らず、自分の姿に似せてはいるものの微妙に不完全なものにした。

 神は男と女の形を全体の構造としてはほぼ同じように創ったが、男は少し直線的に創り、女は少し曲線的に創った。

 そして男の身体はゴツゴツと硬くし、女の身体は丸みを帯びさせて柔らかく創った。

 それと同時に神は男には柔らかいものを求める心を与え、女には硬いものを求める心を与えた。

 神はまた女を男と比べて少しサイズを小さくし、力も男と比較して少し弱くした。

 そのために男は女を見て自然に可愛いいと思わせるようにし、どうしても保護してやりたいと思えるように創った。

 その上で神は、女にだけ子供を生む能力と育てる能力(乳房)を与え、男にはそれを与えなかった。

 男にはどちらかと言えば攻撃型で新しいものを欲しがる開拓心を与え、女にはどちらかと言うと守備型で手に入れたものを守る心を与えた。

 そのせいで男と女の間には何時も諍いが耐えないようになった。

 神によってそのように創られた男と女はまたそれらの構造上、どちらをとってもいわば片手落ちのようなものなので、男は女なしでは生きていけないし、女も男なしでは生きていけないようになってしまった。

 勿論いくつかの例外はある。

 女のような男もいれば、反対に男のような女もいる。女なしでも生きていける男もいれば、男なしでも生きていける女もいる。

 しかし一般的にはほとんどの男と女はこのパターンに当てはまると考えてもいいのではないだろうか。

 斎木には男と女の関係を考える時、いつも不思議に思う事がひとつあった。

 それは、神は何故人間にふたつの性を与えたのかと言うことだ。何故だろう、何故人間はひとつの性であってはいけなかったのだろう?

 性をひとつにして、例えば男がわざわざ女を求めたりなどと言う面倒な事をしなくても、自分は自分だけで充分充足できるという風に、神は何故創らなかったのだろう?

 あるいはまたふたつだけではなく五つも六つも性を創って、いろんな組み合わせが出来るようにするという手もあったはずなのに、神は何故そうはせず、たったふたつだけに集約してしまったのだろう。

 斎木にはそういういわばどうでもいいような当たり前の事が、何故か不思議に思えるときが時々あった。

 街を歩いていると、何十人、何百人の人間と出会うというのに、その中には結局男と女の二種類しかいないという事が、当たり前のことであるにもかかわらず、斎木には何故か不思議な感じに思えてくる時がこれまでにしばしばあった。

 女は決まったように胸が膨らみ、胴がくびれ、腰とお尻が出っ張っている。

 ただ女だからと言う理由だけで、多少の大きさや形の違いこそあれ、大人の女はみんな同じ形をしている。

 それは男の場合も勿論同じでみんな大体ずん胴型に出来ている。普通に考えればそれは別に不思議な事でもなんでもないはずなのだが、そんな当たり前の事が斎木には何故か不思議に思える時がある。

 神はまた何故この世に美しい女と醜い女を創ったのだろう。

 何故頭のいい男と頭の悪い男を創ったのだろう。何故健康な人と病弱な人を創ったのだろう。

 何故働かなくても悠々と生きていける裕福な人と、どんなに努力をしても飢餓で苦しんで死んでいく人を創ったのだろう。

 何故みんな同じようには創らなかったのだろう。

 それは神もまた人間と同じようにエコ贔屓をする存在だからなのだろうか。

 神は完璧だと言うが果たして本当にそうなのだろうか。完璧なら何故こんなにもたくさんの不公平をつくったり、不完全な者をこの世にずっと送り続けているのだろう。

 何故に。何のために。斎木にはどうしてもそれが理解できなかった。

 この世界には六十億人もの人間がいるというのに、一人として神のように完璧な者はいないではないか。

 それは人間を創った神自身がもしかしたら人間と同じように完璧ではないからではないだろうか。

 でなければ、これは神の単なる悪戯としか考えられない、と斎木は人間の深い業に触れるたびに、また自分の中にある、ある種の克服しがたいような悪魔の存在を感じるたびにそう思うのだった。(つづく)

純文学小説 - 小説ブログ村

2008年7月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最近のトラックバック